英文法の部屋

2人称代名詞 thou のお話 ― thou shalt not die

与謝野晶子

thou のお話 ― 初めに

 

thou(ザウ)は、英語の2人称の古い形であり、お祈り、説教、聖書、格言、あるいは英詩の中などに見られます。

これらの2人称は、確かに古い形です。しかし、聖書、シェイクスピアをはじめとする多くの英詩、あるいは、古い格言の中の英語は、現代も引用されます。

また、時として thou は、俗語として日常生活の中で使われることもあります。

「俗語」とは、一般によく用いられてはいるが、標準語法からは、はずれているとみなされる口語表現

 

(例1)「買ったばかりなのにすぐイカレタ (=こわれた) 」

(例2)「きょうはツイテル (=運がいい) 」

 

上の例からわかるように,書き言葉や、正式の話し言葉で用いることは、ためらわれるが,逆に文学作品などで効果をねらって用いられることもある

 

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 より

 

このような次第で、もしかしたら、thou に関する知識が、英語のエッセイ (essay) や、物語文などの読解において、役に立つことがあるかもしれません。(もしかしたらです)

 

S塾長
S塾長
今回は、どちらかと言うと、あなたの心の栄養のために、ちょこっとお話します。

 

などと言いつつ、「2人称代名詞 thou のお話」は、わりと塾長の趣味で書かれています。

というわけで、受験直前で時間がない生徒さんなどは、今このページを読んじゃだめですよ。合格してから、読んでくださいね。

 

勅使河原くん
勅使河原くん
あさって模試なんで、ソッコーでパスします。
S塾長
S塾長
OKです。

 

thou ― 格変化・複数形・意味

 

人称代名詞の格変化とは、主格・所有格・目的格の3つの変化をいうと考えます。

すなわち、人称代名詞の格変化所有代名詞とは区別して考えます。

例として、現代英語の「1人称単数形」の格変化と所有代名詞を挙げてみます。

 

〈人称代名詞の格変化〉

主格 → 所有格 → 目的格

I   →  my  → me

 

所有代名詞:mine

 

さて、英詩の中では、初期近代英語の形が使われることがあります。

初期近代英語:Early Modern English(1500~1700頃)

 

シェイクスピア

「あ、どうも、シェイクスピアです。それって、私の時代なんですよ」

 

現代英語では、単数・複数ともに、 you – your – you が用いられますが、16, 17世紀には、下の表のようにそれぞれ単数形、複数形の区別がありました

単数形 複数形
主格 thou ye
所有格 thine/thy your
目的格 thee you

 

S塾長
S塾長
意味は次のような感じです。

 

thou「汝(なんじ)は」

thine/thy「汝の」

thee「汝を」

 

ye「汝らは」

your「汝らの」

you「汝らを」

 

『ソネット選集― サウジーからスウィンバーンまで ―』

(桂文子・岡村眞紀子・武田雅子著)

 

thou ― 留意点

 

S塾長
S塾長
以下は、thou に関する留意点です。

 

① 目下の者、親しい間柄の者への呼びかけとして用いられます。

 

② 尊称としても用いられます。

→ 例えば、聖書での神への呼びかけthou が用いられています。

 

ye(複数形)

単数の尊称としても用いられることがありますよ。

 

thou と 動詞・助動詞の関係

 

現代英語では、3人称単数の主語に対しては、これを受ける動詞が特別な形になります。

I like flowers.(1人称単数)

You like flowers.(2人称単数)

He likes flowers.(3人称単数)

 

S塾長
S塾長
以上に対し、次の点に気を付けてくださいね。

 

thou が主語である場合、これを受ける動詞が特別な形で呼応します

たとえば、 thou に対して動詞の語尾には -st,est が付きます。

 

さらには、助動詞までが特別な形で thou に呼応します。

たとえば、will, shall は、wilt, shalt になります。

 

〈2人称単数の動詞・助動詞形〉

2人称単数 現在
語尾基本形 – (e)st
go goest
be art
have hast
do dost
can canst
will wilt
shall shalt

 

たとえば、以下のようになりますよ。

 

you are ≒ thou art

you shall ≒ thou shalt

 

このような呼応関係は、過去形でも起こります。

 

勅使河原くん
勅使河原くん
え、そんな…
S塾長
S塾長
勅使河原くん、読んでたんですか?

 

thou, ye が用いられた例文

 

与謝野晶子さん与謝野晶子

 

thou が用いられた例文

 

Thou shalt not steal.

盗むなかれ)

― 聖書中の戒律より

 

Thou shalt not die.

死にたまふことなかれ)

― 与謝野晶子の詩の英訳より

 

Thou shalt not eat your bento during class.

、授業中に弁当を食うなかれ)

― you の俗語として(ふざけた言い方)

 

 

与謝野 晶子(正字: 與謝野 晶子、よさの あきこ、1878年(明治11年)12月7日 – 1942年(昭和17年)5月29日)は、日本の歌人、作家、思想家。夫は与謝野鉄幹(与謝野寛)。

雑誌『明星』に短歌を発表しロマン主義文学の中心的人物となった。

情熱的な作品が多いと評される歌集『みだれ髪』(1901年)や、日露戦争の時に歌った『君死にたまふことなかれ』が有名である。『源氏物語』の現代語訳でも知られる。

 

「与謝野晶子」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2018年9月10日 (月) 11:45 UTC、URL: http://ja.wikipedia.org

 

thou shalt not について

 

thou shalt not

≒ you shall not

この shall not「禁止」を表します。

 

shall には、かたく、やや古い用法として、「命令・指図」を表すものがあります。

「~しなければならない」「~すべし」(≒ must)という意味です。

 

You shall stay here until I say you can go.

(行ってよいと言うまでここにいなさい)

 

このような言い方は、威圧的な態度を示すため、子どもや目下の者以外への使用は避けられます。

 

ye が用いられた例文

 

Ye are the salt of the earth.

汝らは地の塩なり)

― 聖書中の言葉より

 

Gather ye rosebuds while ye may.

(命短し恋せよ乙女)

― Robert Herrick の英詩より

 

See ye, Mike.

(それじゃまたな、マイク)

― you の俗語として

 

英詩中における例(THE LAST ROSE OF SUMMER)

 

薔薇の花々

(先行部分省略)

 

I’ll not leave thee, thou lone one!

aaaTo pine on the stem;

Since the lovely are sleeping,

aaaGo, sleep thou with them.

Thus kindly I scatter

aaaThy leaves o’er the bed

Where thy mates of the garden

aaaLie scentless and dead.

 

(後続部分省略)

“THE LAST ROSE OF SUMMER”

― Thomas Moore

S塾長
S塾長
ふっふっふっ。偶数行末だけ韻を踏んでいることに、あなたは気が付きましたか?

 

(和訳例)

汝をひとり 残しはせぬ、

さびしきものよ。

茎の上に ひとり やつれ果てさせは。

(うる)わしき友は 眠りてあれば、

も逝(い)きて、友と眠れ。

さればわれ 汝が葉を

涙して散らさむ、

汝が友の香(か)も あせて

死して臥(ふ)す床(とこ)の上に。

『夏の名残りの薔薇』より

 

この詩も The Irish Melodies の一篇であるが、ドイツの十九世紀の作曲家 Flotow (1812-83) によって歌劇 Martha に取り入れられてからは、特に有名になった。

仲間のバラがすべて散って、ただ一つ咲き残っている淋しい庭のバラを見て哀れに思う心を歌ったもので、人間も友情や愛情が色褪せると、この世の侘しさに堪えられないと結んでいる。アイルランドの民謡はどれも非常に淋しいものである。

『英詩読本』(荒牧鉄雄・岡地嶺 著)

 

S塾長
S塾長
このページを読んだ生徒さんの中から、わずか一人でも、英詩に興味を持つ方が出てきてくれたら、うれしいのです。
御手洗くん
御手洗くん
塾長、気が済みましたか?
S塾長
S塾長
はい。

 

薔薇一輪のイラスト

またお会いしましょう

 

あわせて読みたい
猫の目
英詩「夜は千の眼を持つ」をすごくマジメに鑑賞してみたまずは原文をご覧ください。 THE NIGHT HAS A THOUSAND EYES ― F. W. Bourdillon ...