質問と回答の軌跡

英文中のカンマの位置,要否について回答した軌跡

質問

Although her character is similar to her mother’s, in appearance she resembles her father.

(彼女は性格は母親似だが、見かけは父親に似ている)

 

in appearance の後は、

なぜカンマがいらないのでしょうか?

以下の These daysのように、カンマはつかないのでしょうか?

 

These days, neither Tom nor I work overtime.

(最近は、トムも私も残業をしていません)

 

回答

 

in appearance の後に

カンマがいらない理由は、

そもそも、

ここにカンマを打つべきではない 

からです。

 

説明

 

① Although her character is similar to her mother’s in appearance she resembles her father.

 

この①の英文では、

接続詞 although によって、

her characterから mother’sまでの前文と、

in appearance からfatherまでの後文とが、

結ばれています。

 

そして、

この二つの文の区切りを示す目印として、

カンマが打たれています。

 

S塾長
S塾長
以下のような感じですね。

 

① Although

(前文)her character is similar to her mother’s

(後文)in appearance she resembles her father.

 

なお、この英文において、

in appearanceは副詞句として、

述語動詞の resemblesを修飾しています。

 

もし、①の英文で、

in appearance の後にもカンマを打つと、

以下のようになります。

 

② Although her character is similar to her mother’s, in appearanceshe resembles her father.

 

この英文中でも、

in appearanceは、修飾語として働いています。

さて、この②だけ見て判断してみましょう。

 

この修飾語は、前文に含まれるものでしょうか?

それとも、後文に含まれるものでしょうか?

 

すなわち、in appearanceは、

どこを修飾しているのでしょうか?

 

そうですね、

文の「形」だけから判断すれば、

どちらとも読めます。

 

もちろん、

文脈の存在や、常識的判断により、

書き手の意図を読み取って、

この文を正しく読める可能性はあります。

 

S塾長
S塾長
しかし、私たちは次のように考えるべきではないでしょうか。

 

文字を通して英文を読む際には、音声による情報がありません。

したがって、以下のポイントのようなことが、言えると思います。

 

英文を読む際には、

原則として、品詞・語形・語順・構造などの、

「形」による情報に頼らざるを得ない。

 

そうであるならば、

読み手が判断に迷うような書き方や、

必然性のないカンマの打ち方を

すべきではないでしょう。

 

そうです、あいまいな「形」の英文を書くべきではないのです。

 

S塾長
S塾長

このことを、高橋善昭先生がご自身の名著の中で、以下のように述べられています。

 

 

英文を読むとは、

書き手が「形」に託した意味を、

読み手が「形」から取り出す作業である

とも言い得よう。

―「英文読解講座」(高橋善昭著)

 

 

御手洗くん
御手洗くん
この先生は、伊藤和夫先生の流れを汲(く)む方ですね。
S塾長
S塾長
おっしゃる通りです。

 

以上のような理由から、

in appearance の後にカンマを打たないのは、

(1) その必然性がないからであり、

また同時に、

(2) もしその位置にカンマを打てば、

読み手を惑わせるだけだからである、

と言えます。

 

勅使河原くん
勅使河原くん
あ、塾長、冒頭の

These days, neither Tom nor I work overtime.

の場合は、どうなりますか?

 

S塾長
S塾長
それは、こう考えましょう。

 

These days neither Tom nor I work overtime. 

この場合は、カンマを打っても、打たなくても構いませんよ。

 

These daysが「文修飾の副詞句」であることは明らかであり、

読み手は判断に迷わないからです。

 

 

S塾長
S塾長

さて、ひと息いれて、私はコーヒーでも飲みましょう。

あなたも、どうぞ、ご無理はなさらぬように。