どうしても英文読解が苦手なすべての人
S塾長:英語講師
勅使河原(てしがわら)くん:生徒
目次
英文を読むための「心」(attitude) の準備
基本レベルの英文に取り組んでみましょう
In many places the towns Mary talked about with her friends were talked about by curious people.
※ curious people:物好きな人々
「誤った読み方」と「正しい読み方」の比較
例題の誤った読み方として、教室内では次のような例がよく見られます。
メアリーが友人と話題にした町の多くの場所が、物好きな人々の話題になった。
生徒さんたちに聞いてみると、上の誤訳の最大の原因は、次のようなものです。
すなわち、Mary以下の部分がなんだかよくわからない。だから、そちらに気を取られて「前置詞 In から town までの部分」を読み流している。
「読み流す」とは、細かな所までは注意せず,おおざっぱに読むということです(『三省堂大辞林』より)。
これに対し、例題の正しい読み方として、次のような例が挙げられます。
In many places the towns Mary talked about with her friends were talked about by curious people.
メアリーが友人と話題にした町が、多くの場所で物好きな人々の話題になった。
まず、英文の分析はあとで行うことにして、ここでは二つの日本語訳の内容だけを、比較検討してみます。
X メアリーが友人と話題にした
町の多くの場所が、物好きな人々の話題になった。
〇 メアリーが友人と話題にした
町が、多くの場所で物好きな人々の話題になった。
【悪い例】では、町の多くの「場所」を主語と捉えています。
ここが決定的な誤りです。
「場所」(places) が、「物好きな人々の話題になった」のではありません。
【良い例】のように、「町」が「物好きな人々の話題になった」のです。
すなわち、 the towns が主語なのです。
…と、いうように、「いや、ひょっとしたら、これは大違いじゃないか」と気づき始めてくれていたら、うれしく思います。
このような、一見ささいな日本語の違いにさえ、つとめて敏感になることが、正確な英文読解のための第一歩であると、私は考えています。
自分の母国語(日本語)にさえ無頓着な人が、不慣れな外国語(英語)に対してだけ敏感になれるとは、私には思えないからです。
このくらいの単純な英文さえ、日頃から手を抜いて、あいまいに読むクセをつけてしまうと、複雑な形式と知的に高度な内容をもった英文に出会ったとき、完全に敗北します。
というよりも、残念なことに、そのような英文に触れる機会さえ持てないでしょう。単純な構造と浅い内容しか持たない英文を、いわゆる勝手読みするだけで、英語学習が終わってしまうのです。
あなたは、それでいいですか?
このサイトを、はるばる訪れてくれた、あなたです。
いいわけはないですよね。
想像とフィーリングだけの不正確な読み
不正確な日本語訳を作成する人は、不正確に英文を読んでいます。いえ、厳しい言い方をすれば、英文を読んでいません。
「英文を読む」とは、決められたルールにしたがって読むことをいいます。
「きめられたルール」とは、英文を読むための文法や「目に見えない次元に存在するルール」などを含んだ、英文を読むための約束事です。
これらを知らずに、あるいは気にせずに英文を読むということは、絶えず約束を破りながら、英文を目で追っている、ということになります。
※下線部は『英語リーディング教本』(薬袋喜郎 著)の P 209より。
『英語リーディング教本』はきわめて優れた参考書だと思います。
著者の薬袋先生の言葉に何度もうなずきながら、私はこの本を読み進めた覚えがあります。
この本は、品詞分解(文の解剖)を行うものです。この「文の解剖」は本来、薬袋先生もおっしゃるように、副作用の強い劇薬のようなもので、下手に手を出すとかえって害を及ぼします。
ただ、この本は全体を通して、実に懇切丁寧な解説が行われており、独習を予定した参考書として完成しています。
もしあなたが、品詞分解という学習方法になじみやすいタイプであるなら、この本により、飛躍的な向上を望めるでしょう。
万が一、つまずいたら……、そのときは、わたしのところへいらっしゃい。
不正確に英文を読む人は、英文をながめながら、頭の中で、英単語に自分の知っている日本語訳を機械的にあてはめて、それらを想像やフィーリングで、勝手に組み立てているに過ぎないと言えます。
その組み立て作業は、カンが当たれば正解するし、外れれば不正解になります。もし、この文章を読んでくれているあなたが、現在そのような状態であるならば、ずっとそのままでいいですか?
そうですね、いいわけはないですよね。英文を読むのであれば、正確に読まなければならない。真剣に読まなければならない。
あなたがもし高校生であるならば、進路に大きく影響するのですから。社会人であるならば、仕事に影響するかもしれないのですから。
センスがある人こそ、我流を捨てるべき
また、カンが鋭くて、センスのある生徒さんの中には、次のようなタイプの人がいます。
読解のルールに対して、ほとんど無頓着で、英文法もうろ覚えのまま、なんとなくこういう意味じゃないかなと、想像しながら、いつも英文を読んでいる。
このタイプの人たちは、カンが鋭いから、けっこう意味は当たります。また、そこそこ文法を知っているし、常識もあるから、まったくピントのはずれた読み方などはしません。
でも、常にどこか不安を抱えている。自分が本当に読めているのか、全訳を見るまでは確信が持てない。
全国模試などでは、そこそこの点数を取ることができる。でも、波があり、継続して高得点は取れない。
いつもどこかでポロポロと点を落とす。どうしても時間が足りない、複雑な英文に出会うと、つい読み違いをしてしまう。
もし、あなたがそのようなタイプであるのなら、足りないのは、やはり、英語学習に対する真摯な態度 (attitude)と、英文読解のための技術 (skill)です。
たとえあなたが、おそるべき語学の才能の持ち主であったとしても、まったくの我流では限界があると思います。仮にそうでなくとも、きわめて効率が悪いと思います。
まずは心を入れ替えて、文法を網羅的にやり直した上で、次に、読むための技能や理論の習得に力を注ぐべきです。
「たとえ、おそるべき語学の才能の持ち主であったとしても、まったくの我流では限界がある。もしくは、効率が悪い。センスがある人ほど逆に、先達者の声に、素直に真摯に耳を傾ける」
これはかつて私が、天才的なセンスを持つ生徒さん(F君)を教えた経験から、得た結論です。
F君は理系に進んだ生徒さんであり、数学の成績は全国模試で全国2位を取るような人でした。
同時に、語学のセンスも素晴らしく、その発想の鋭さや、ものごとの本質に到達する速度に、教えている私自身が感動するほどでした。(ちなみに、F君の高1のときの英語の偏差値は100です)
「ルールを知らなければ、たとえどんなにセンスがあっても、正しく読めない。我流でやるよりも、知ってる人に聞いたほうが早い」
見事なほど効率的であったF君は、このことがよくわかっていたのではないかと思います。本当に、素直にかつ真摯に、私の声に耳を傾けてくれました。
ずば抜けたセンスを持っている人ほど、ものごとの本質にたどり着く速度が速い。そんな、ごく当たり前のことを、あらためて私に実感させてくれた人。
彼が自分の生徒であることが、私の誇りである。心からそう思わせてくれた人。
そして、誰よりも「虎」であった人。
それが彼でした。
「虎」の諸君を応援し続ける
私は塾講師として、毎年さまざまな生徒さんたちと出会います。おもに高校生諸君と、教室で時間を共有することにより、私は多くのことを学びます。
私が思うに、英語の成績が伸びた生徒さん達には、いくつかの共通点があります。
もちろん、語学に対する「素質」もその一つでしょう。
しかし、それ以上に、当たり前のことですが、誰よりも真摯に英語の学習に取り組んだということが、大きな要因のように思えます。
具体的に言えば、必死に英単語を覚える。塾で行う単語テストのために、毎回絶対に覚えてくる。部活があろうとテストがあろうと、何があろうと覚えてくる。
塾で一度読み方を教わった英文は、その読み方や思考のプロセスを、けっして忘れない。忘れないように、塾の外でも反復し続けている。
そして、長文読解問題の本文にある英文をすべてきちんと読む。読み方の不明な英文はすべて質問してくる。一文たりとも、あいまいなまま残したりしない。妥協はしない。
そう、彼らは、決して満足せず、熱意をもって、ひたすら、貪欲なほど、英語に取り組む。
誰よりも、何よりも、貪欲に、苛烈に、まるで飢えた虎のように、英文に喰らいつく。
虎のように英文を読む。
そう、彼らは虎のように英文を読む。
今これを読んでくれているあなた、もう一度だけ聞きます。
あなたは今のままでいいですか?
もし変わりたいのなら、別人に、いや、別のほ乳類に生まれ変わるぐらいの気持ちで、英語の学習に取り組みなおすべきです。
別のほ乳類、そう、「虎」です。誰よりも何よりも真剣にやるのです。
あなたに必要なものはまず、「虎の心」です。
すなわち、一切の手抜きなしで、真摯に英文と向かい合う心。
私は、虎の諸君、及び、虎になろうとする諸君を心から尊敬します。
そして、全力で応援し続けます。
このサイトはそういうサイトです。
せっかくですから、例題の解説をしておきましょう
例題の英文は次のように読まなければなりません。
①In many places /
②the towns
[which](Mary talked about
with her friends) /
③were talked about
by curious people.
まず、①In many places は、主語になることができません。
「前置詞の付いた名詞は主語になれない」というのが英語の大切なルールなのです。
◎前置詞の付いた名詞は、主語になることができない
では、この①In many places は何なのでしょうか?
答えは、場所を示す修飾語句です。
働きは、③were talked about の修飾です。
和訳すると「①多くの場所で ③話された[話題になった]」となります。
なお、③の前置詞 about は訳出する必要はありません。これは日本語と英語の習慣の違いによるものです。
さて、上で「ルール」として説明しましたが、前置詞の付いた名詞は、主語になることができません。
では、なぜ前置詞の付いた名詞は、主語になれないのでしょうか?
答えは、それが「名詞以外」の働きをするからです。
英文中では、「名詞(または、名詞の働きをするもの)」だけしか、主語になれません。「名詞以外の働きをするもの」は、主語になれないのです。
主語になれるのは、名詞(もしくは名詞の働きをするもの)だけである
前置詞について
いま、この文章を読んでいるあなた、本気で、英文を正確に読みたいのであれば、英文中の前置詞について、私と一緒に真剣に考えましょう。
中学校で習う前置詞や接続詞の多くが、その働きが重要な「機能語」と呼ばれるものです。
これらはけっして読み流してはならない重要な単語なのです。
以下に、英文解釈の優れた師の一人である、伊藤和夫先生の言葉を引用します。
英語の単語には「意味」が重要なものと、「働き」が重要なものがある。
名詞・動詞・形容詞などは前者であり、助動詞・接続詞・前置詞などは後者である。
「働き」が重要な単語は、中学の段階で大部分が出つくすために、やさしいし、もう分かっていると思われることが多い。
(そのため、次のように考える人もいる)
いや、その種の単語が文中に現れるのは何かのはずみ、せいぜい口調によって決まることだから、いちいちかまっている必要はない。
(その結果、次のようなことになる)
むずかしい単語の意味さえ分かれば、それをどうつなぐかは「カン」と「想像力」の問題だと考えている人さえ多いのである。
(しかし、そうではない!)
正確な意思伝達を目ざす言語の基本が、個人によって異なるカンや想像力であってよいはずはない。
実は、やさしいと思われている「働き」中心の単語こそ重要で難しいのであり、意味を中心とする単語をそれらが一定の約束に従って縫い合わせるところに文章の不動の意味が生まれるのである。
『英文解釈教室』【改訂版】より
( )内はS塾長による加筆です。
この書物の紹介は、これがすべてです。
英文を読むための「技能」(skill) の準備
後編へと続きます
関係ないけど、クリームチーズもいいよね。